夏インフルエンザとは?症状・見分け方と訪問看護での観察ポイント

夏インフルエンザとは、夏にインフルエンザウイルスへ感染し、発熱、咳、のどの痛み、倦怠感などがみられる状態を指して使われる言葉です。正式な病名として「夏インフルエンザ」があるわけではなく、夏に発症するインフルエンザを分かりやすく表した呼び方です。
インフルエンザは冬に流行するイメージが強いですが、夏でも感染することがあります。夏風邪や熱中症、新型コロナウイルス感染症などと症状が似ていることもあるため、体調の変化を具体的に観察することが大切です。この記事では、夏インフルエンザの症状、原因、見分け方、受診の目安、在宅での観察ポイントを解説します。
目次
夏インフルエンザとは
夏インフルエンザとは、夏に発症するインフルエンザのことです。厚生労働省によると、日本では例年12月〜3月がインフルエンザの流行シーズンですが、ウイルスは世界中で流行しており、地域によっては年間を通して感染がみられることがあります。温帯地域では冬に流行しやすく、熱帯地域では年間を通じて発生することがあります。
夏にインフルエンザがみられる背景の一つに、南半球での流行があります。東京都健康安全研究センターによると、日本を含む北半球が夏の季節のとき、南半球は冬にあたり、インフルエンザが流行する季節を迎えています。
「夏だからインフルエンザではない」とは言い切れません。高熱、強い倦怠感、関節痛、咳などがある場合は、季節に関係なくインフルエンザを含む急性呼吸器感染症を考える必要があります。
夏インフルエンザの症状
夏インフルエンザの症状は、冬にみられるインフルエンザと大きく変わりません。突然の発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、関節痛、倦怠感に加え、咳、のどの痛み、鼻水などの呼吸器症状がみられることがあります。
主な症状には、以下があります。
- 発熱
- 悪寒
- 頭痛
- 関節痛
- 筋肉痛
- 強い倦怠感
- 咳
- のどの痛み
- 鼻水
なお、悪心・嘔気や下痢などの消化器症状は、成人でみられることもありますが、特に小児で多いとされています。
多くの場合、症状は3〜7日で軽快に向かいますが、特に高齢者や慢性肺疾患の方では、咳やだるさが2週間以上続くこともあります。また、高齢者では発熱がはっきりしないことや、意識・行動の変化、食欲低下といった典型的でない形で現れることもあります。合併症として肺炎などが起こる場合もあるため、高齢者、乳幼児、妊婦、基礎疾患のある方は特に注意が必要です。
夏風邪や熱中症との違い
夏インフルエンザは、夏風邪や熱中症と症状が似ていることがあります。発熱、だるさ、頭痛などは共通してみられるため、症状だけで見分けるのは難しい場合があります。
夏風邪では、のどの痛み、咳、鼻水、下痢、口の中の水疱、発疹などがみられることがあります。一方、インフルエンザでは、急な高熱、強い倦怠感、関節痛、筋肉痛が目立つことがあります。
熱中症では、暑い環境にいた後に、めまい、頭痛、吐き気、筋肉のけいれん、体温上昇、意識の変化などが起こることがあります。咳やのどの痛みがある場合は、感染症の可能性もあわせて考えます。
ただし、家庭や訪問看護の現場で病名を断定することはできません。発熱の経過、呼吸器症状、周囲の流行状況、水分摂取量、尿量、意識状態をあわせて確認し、必要に応じて医療機関へ相談しましょう。
うつる期間と感染対策
インフルエンザは、咳やくしゃみのしぶき、ウイルスがついた手を介して広がることがあります。厚生労働省によると、発症前日から発症後3〜7日間は鼻やのどからウイルスを排出するといわれています。発症前後から周囲へ感染を広げる可能性があるため、症状があるときは無理に出勤や登校をしないことが大切です。
感染対策では、以下を意識します。
- 手洗いを行う
- 咳エチケットを守る
- 不織布製マスクを適切に使う
- 室内を換気する
- タオルの共有を避ける
- 体調不良時は人との接触を控える
- 十分な休養を取る
咳や痰などの症状がある場合は、周囲への感染を防ぐため、マスクの着用を含む咳エチケットが重要です。また、手のひらで咳やくしゃみを受け止めたときは、すぐに手を洗いましょう。
治療の基本と抗ウイルス薬
インフルエンザの治療では、症状や重症化リスクに応じて抗インフルエンザ薬が使われることがあります。発症から48時間以内に服用を開始すると、発熱期間は通常1〜2日短縮されるとされ、重い合併症を防ぐことにつながる場合もあります。
一方で、軽症で重症化リスクが低い場合は、安静、水分補給、解熱鎮痛薬などによる対症療法で経過をみることもあります。自己判断で以前に処方された薬を使ったり、薬を途中で中止したりせず、医師や薬剤師の指示に従いましょう。
発熱時は汗で水分が失われやすく、夏は暑さによる脱水も重なりやすい時期です。水分が取れているか、尿量が減っていないかを確認します。心不全や腎機能低下などで水分制限がある方は、自己判断で水分量を増やさず、医師や看護師に確認しましょう。
何科を受診する?受診の目安
夏インフルエンザが疑われる場合は、内科、小児科、呼吸器内科などで相談できます。かかりつけの病院があれば、主治医に相談すると日頃の状況と合わせて診察してもらうことができます。受診前には、発熱や咳があることを医療機関へ伝え、受診方法を確認すると安心です。
以下のような場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
- 高熱が続く
- 呼吸が苦しい
- 咳が止まらない
- 胸の痛みがある
- 水分が取れない
- 尿量が少ない
- ぐったりしている
- 意識がぼんやりしている
- けいれんがある
- 乳幼児、高齢者、妊婦、基礎疾患のある方に症状がある
厚生労働省も、高熱が続く、呼吸が苦しい、意識状態がおかしいなど具合が悪い場合は、早めに医療機関を受診するよう呼びかけています。
訪問看護での観察ポイント
訪問看護や介護の現場では、発熱の有無だけでなく、呼吸状態や脱水のサイン、普段との違いを確認します。
観察したいポイントは、以下のとおりです。
- 発熱の有無と出現時期
- 最高体温
- 咳や痰の有無
- のどの痛みの有無
- 息苦しさの有無
- 呼吸数
- SpO2
- 食事量
- 水分摂取量
- 尿量や尿の回数
- 倦怠感の程度
- 意識状態
- 周囲の感染症の流行状況
- 服薬状況
- 基礎疾患の有無
記録する場合は、以下のように具体的に書くと共有しやすくなります。
「昨日18時ごろから発熱あり。最高体温38.9℃。咳とのどの痛みあり。水分は少量ずつ摂取可能。尿は朝から1回。家族にインフルエンザ陽性者あり。」
「発熱2日目。体温39.0℃。倦怠感が強く、食事摂取は数口程度。SpO2 94%。呼吸苦の訴えはないが、普段より声掛けに対して反応が遅い。主治医へ報告。」
このように、「いつから」「どの症状が」「普段と比べてどう違うか」を整理すると、医師に状態を伝えやすくなります。
訪問看護でできる予防のポイント
夏インフルエンザの予防でも、基本は冬のインフルエンザ対策と同じです。手洗い、咳エチケット、換気、十分な休養、栄養摂取、人混みを避けることなどが有効と考えられています。
予防のポイントは、以下のとおりです。
- 外出後や食事前に手を洗う
- 咳やくしゃみがあるときは口と鼻を覆う
- 室内をこまめに換気する
- 睡眠不足を避ける
- 体調不良時は無理をしない
- 人混みでは感染対策を意識する
- 流行状況に応じてワクチン接種を検討する
ワクチンは、発症を完全に防ぐものではありませんが、重症化予防につながることがあります。特に高齢者や基礎疾患のある方は、接種時期や対象について、かかりつけ医に相談するとよいでしょう。
まとめ
夏インフルエンザは正式な病名ではなく、夏に発症するインフルエンザを指す言い方です。インフルエンザの流行の中心は冬ですが、季節を問わず感染することがあります。
主な症状は、発熱、悪寒、頭痛、関節痛、筋肉痛、強い倦怠感、咳、のどの痛みなどです。ほかの夏の体調不良と区別しにくいため、症状だけで判断せず、経過や周囲の流行状況もあわせて確認しましょう。
訪問看護では、発熱、呼吸状態、SpO2、水分摂取量、尿量、意識状態、普段との違いを観察することが大切です。高熱が続く、息苦しい、水分が取れない、ぐったりしている、意識がはっきりしない場合は、早めに医療機関へ相談しましょう。
| 監修:飛鳥馬 沙耶(あすま さや)/訪問看護ステーション 管理者 HCU・高度急性期病棟にて約6年間、循環器・心臓外科・脳外科領域を中心とした急性期看護に従事。2023年より訪問看護ステーションの管理者として、在宅医療の現場に携わる。専門領域は、訪問看護・在宅医療、急性期看護。 |
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